缶コーヒーはどうやってうまれたのか?
マックのコーヒーはなぜ100円で、しかもおいしいのか?
スタバがなぜ流行ったのか?
ネスレのエスプレッソマシンは、安かったり、無料レンタルされているのか?
この本は、コーヒーの売り方を通して、「マーケティング」を教えてくれる。
この記事の目次
本日の読書「戦略は『1杯のコーヒー』から学べ」永井孝尚(著)
著者:永井孝尚さん
マーケティング戦略アドバイザー。
1984年に慶應義塾大学工学部を卒業後、日本IBMに入社。マーケティングマネージャー、人材育成部長等を担当。
2013年に日本IBMを退社して独立。
ウォンツアンドバリュー株式会社を設立、代表に就任。
専門用語をつかわずにわかりやすくマーケティング戦略の本質を伝える。
著書に、50万ヒット作「100円のコーラを1000円で売る方法」など
目次「戦略は『1杯のコーヒー』から学べ」
- ドトールの本当の勝因は「低価格戦略」ではない
- 「邪道」と言われた缶コーヒーでUCCが成功した理由
- マクドナルドがプレミアムローストで目指したもの
- 「コーヒーの香り」を失ったスタバが考え続けたこと
- ネスレはなぜコーヒーマシンを無償で提供するのか?
- 5度目の正直で大ヒットしたセブンカフェ
- 「コーヒー界のアップル」ブルーボトルの第3の波
- お客はカフェの「何に」お金を払うのか?
- サステイナブルでないコーヒーは生き残れない
- スタバが広告費をほとんどかけない理由とは?
初心者が勉強するのにオススメのマーケティング本
身近なお店や企業であるドトール、UCC缶コーヒー、マクドナルド、セブンイレブン、スタバなどが「なぜヒットしたのか?」を、わかりやすく説明してくれている。
マックのコーヒーの話や、ブルーボトルコーヒーの話にしろ、飲食にたずさわっている者にとっては有名な話もありますが、改めてわかりやすく解説してくれているので、学びになる。
本にかいてある実例をいくつか取り上げたいと思う。
お客様がほしいって思っているものが、お客様のためになるとは限らない
- 顧客に何がほしいかを聞いて、その通りにつくっても、顧客のためになるとは限らない。(DVDのリモコンにはいろんな機能がついているが使われることは少ない)
家電の日本の企業(ソニー、三菱、シャープ)とアップルの比較すると、
日本の企業がつくるものは、テレビやDVDのリモコンにはあらゆる機能が満載だ。
よく考えると使っていない機能がたくさんあったり、使いこなすのに分厚い説明書を読むところからスタートしないといけない。
それに対して、アップルは、たとえばiPhoneがわかりやすい。
シンプルな構造でボタンすらなくして、説明書を読まなくても使うことができる。
この違いが業績の結果となっている。
お客様のためだと思って、たくさん機能をつけた結果、お客様のためにならなかった典型的な例だ。お客様の満足ではなく、気がついたら作った企業側の満足の商品になっていた。
- 隠れたニーズは、顧客に聞いてもわからない。顧客自身も気づいていないから。
ここでは、缶コーヒーができた時の話が説明されている。
1969年当時は市場として存在していなかった缶コーヒーの現在の市場規模は、年間8000億円だ。それまでのコーヒー牛乳の顧客は『牛乳スタンドで飲む』客だった。しかし、UCCは『どこでも飲める』という顧客の隠れたニーズを見つけだし、果敢に困難に挑戦した。その結果、8000億円もの市場を新たに創造した。
缶コーヒーができるまでは、コーヒー牛乳は、「牛乳スタンドで飲むもの」というのが常識で、それが当たり前だった。そこに疑問すら持ててなかった。
「どこでも飲めたら」そりゃいいけど、そんな発想すらうまれてこない。それは非常識な考えだから。
そこに、ビジネスチャンスがある。
人がもっている無意識のニーズに、ビジネスのヒントがある。
消耗品で儲けるビジネスモデル→ジレットモデル
消耗品で儲けるビジネスモデル、髭剃りのジレットより名前がついた
ジレットは、髭剃りの持ち手部分は利益を抑えて安値で大量に販売し、消耗品の替え刃で儲けている。プリンタやコピー機もトナーやインクで儲けている。つまり本体を安くして消耗品で儲けている。→継続的に稼げるビジネスに育つ。
消費者は、製品本体を買うときには価格をじっくり見定め、お買い得商品を探す。ここでは消費者が主導権を握っている。だが、消耗品の価格まで調べる人はあまりいない。
このジレットモデルも、人の心理をついた発想でおもしろい。
どこまでいっても、商品を売るのではなく、人に売るってことなんだ。
考えるべきは「自社らしさ」
- 「顧客中心主義だから顧客から考えるべき」と考えがちですが、本書で繰り返し述べているように、最初に考えるべきは「自社らしさ」です。自社の強みに徹底的にフォーカスするところから始めます。
著書が、この本でもっとも伝えたいメッセージ。
内容はわかりやすく簡潔に書いてあるだけに、ここを深く掘り下げたい。
顧客から考えると、どうしても平準化されたものになってしまったり、資本が強いところに負けてしまう。
「自社らしさ」が差別化であり、強みに変わる。
これって、会社ではなく「自分」にあてはめても同じ。
この文章を読んで思ったことが、
「顧客中心主義だから、顧客から考えるべき」という文章が、
個人に置き換えたとき、
「他人中心主義だから、他人からどう思われるかから考えるべき」って一般的に考えがち。世間の目を気にして、自分の仕事や夢とかも他人の価値観のもと無意識に考えてしまいがち。
個人においても「自分らしさ」が差別化であり、強みに変わり、しあわせにつながる。
この文章のメッセージは、ぼくはもっともっと深いものを感じた。
【戦略は「1杯のコーヒー」から学べ】書評のまとめ
ぼくにとっては、身近なコーヒーの話だったので、すごく興味をもちながら読めた。
コーヒー豆って、コーヒーの木の実だと思っていた。実はコーヒー豆は、コーヒーの実の中にある種の部分。
コーヒー豆の品質がよくないものは、味をごまかせやすい缶コーヒーにする。
コーヒー豆を生産してくれている現地の人にとっては、コーヒーは高級品のため飲むことが難しい。
など、コーヒー周辺の豆知識もわかって、非常に興味深く読めた。
マーケティング・ブランディング本として、これは初心者にわかりやすい本だ。
Amazonの投稿されている書評を見ると、ストーリーがつまらないなど一部批判的なことも書かれていますが、この本の目的はマーケティングをわかりやすく伝えることだ。
その伝えたいことをストーリーにのせて、伝えている。
ぼくは飲食店にたずさわっている立場として、このストーリーは共感したし、おもしろかった。
難しいことや複雑なことを、わかりやすく楽しく伝えることって、むずかしい。
それをわかりやすくまとめたこの本は、ぼくはオススメしたい。